妊活中に摂るべき栄養素、「葉酸」を含む食材と食べ方のポイント 2020.2.21 fri

葉酸は胎児の正常な発育に必要不可欠な栄養素で、妊娠を計画している女性は意識して摂る必要があります。 今回は、葉酸の働きや1日に必要な量、食事から効率よく摂取する方法についてお話しいたします。


葉酸は水溶性ビタミンであるビタミンB群の一つです。ビタミンB12と一緒に赤血球の形成に働き、「造血のビタミン」とも言われています。また、たんぱく質や遺伝子情報を持つDNAの合成に関与しており、細胞増殖の盛んな胎児の発育のために必須の栄養素です。そのため、葉酸が不足すると貧血が起こり(巨赤芽球性貧血)、妊娠初期の不足では胎児の発育に支障をきたす可能性が高くなります(神経管閉鎖障害)。

胎児の神経管が正常に形成されず、脊椎や脳に障害が起きてしまう先天異常です。代表的なものに、脊椎に癒合不全が生じる二分脊椎や脳の発育が出来ない無脳症などがあります。神経管の形成には葉酸が関与しており、妊娠前から妊娠初期の間に十分に摂取すると発症のリスクが低減する、ということが明らかにされています。

「日本人の食事摂取基準2015年版」で策定された葉酸の摂取基準(推奨量)は、18歳以上で240μg/日、妊婦の付加量は240μg/日です。これとは別に、妊娠を計画している女性は、神経管閉鎖障害の発症リスク低減のために、サプリメントなどの栄養補助食品から400μg/日のプテロイルモノグルタミン酸(吸収率のよい葉酸)の摂取が勧められています。神経管は妊娠ごく初期の間に形成されるため、妊娠前から意識的に摂取することが重要です。ただし、サプリメントは手軽さゆえに過剰摂取にも気をつけなければなりません。プテロイルモノグルタミン酸の上限量は900~1000μg/日とされています。葉酸を意識したバランスのよい食事をベースに、適正量を補うようにしましょう。

葉酸を多く含む代表的な食材は以下の通りです。 動物性食品ではレバーや魚介類、植物性食品では緑色の野菜に多く含まれていることが分かります。

動物性食品 葉酸
(μg/100g)
植物性食品 葉酸
(μg/100g)
鶏レバー1300菜の花(和種)340
牛レバー1000枝豆320
豚レバー810ブロッコリー210
うなぎの肝380春菊190
うに360アスパラガス190
すじこ160糸引き納豆120
卵黄(鶏卵)140いちご90
ほたて87アボカド84

日本食品標準成分表2015年版(七訂)より作成 ※生の状態での含有量

葉酸は熱に弱く、水に溶けやすい性質があり、調理によって失われやすい栄養素です。生もしくは煮汁ごといただけるスープ等でいただくと良いでしょう。レバーは少量で必要量を摂取できますが、ビタミンAも多く含むため、日常的に食べるとなると過剰症の心配があります。さまざまな食品からバランスよく食べましょう。納豆は調理による損失を受けず、手軽に食べられます。果肉の水洗いや加熱不要なアボカドもおすすめの食材です。下茹でが必要な野菜(アスパラガスやブロッコリー等)は、電子レンジで蒸すなどの工夫をすると良いでしょう。いちごは洗ってからヘタをカットすると流出を防ぐことが出来ます。また、菜の花や春菊など、栄養価の高い「旬の食材」を選ぶのもポイントです。

「精のつくレシピ集」で紹介している中で、葉酸(μg)が多く摂れるレシピを集めてみました。

※数値は1人分あたりで、調理過程における損失を考慮していません。

葉酸だけを意識して摂るのでなく、主食を中心に、主菜、副菜をさまざま食品から、バランスのよい食事を心がけましょう。朝・昼・晩の3回の食事を決まった時間に食べる、体を冷やさないように温める、睡眠をしっかり確保するなどといったことも、妊娠しやすい体づくりのために大切なことです。精のつくレシピ集では、主菜、副菜、汁物と、さまざまなカテゴリーで料理をご紹介しています。毎日の献立作りに是非ご活用ください。

参考
日本人の食事摂取基準2015年版(葉酸)
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000067134.pdf
「妊婦のための食生活指針」神経管閉鎖障害発症リスク低減のために妊娠可能な年齢の女性等に対する葉酸摂取に係る適切な情報提供の推進について
https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/dl/h0201-3a3-03c.pdf
eヘルスネット 葉酸とサプリメント-神経管閉鎖障害のリスク低減に対する効果
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-002.html

亜鉛 … 免疫力アップ、糖尿病予防、疲労解消

セレン … 精子の形成や老化・がん予防

マンガン … 骨の形成、糖質・脂質の代謝

ビタミンE … 抗酸化作用、血行促進効果

ビタミンB1 … 疲労回復、スタミナ増強

ビタミンB2 … スタミナ増強、過酸化物質を除去

ビタミンC … 免疫力を高める、抗酸化作用

アルギニン … 精子数や精子の運動率を上げる、子宮内膜を厚くする

アスパラギン酸 … 疲労回復や利尿作用

ムコ多糖類 … 疲労回復や滋養強壮

クエン酸 … 疲労回復、スタミナ・食欲増進

執筆者

緑川 鮎香

管理栄養士・フードコーディネーター・オリーブオイルジュニアソムリエ


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