レビトラの食事の影響・血中濃度・代謝

浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修

よく「レビトラは食事の影響がないんですよね?」と聞かれる方がいますがそれは誤りです。食事の影響を受けます。ある一定の食事内容であれば影響を受けないというデータはありますが、食事には制限があるということを覚えておいて下さい。では、その制限についてご説明いたします。

バイエル薬品の提供する資料には「標準的な食事の影響は受けない」とありますが、「標準的な食事」の注意点として「総エネルギーの脂肪の割合は30%」とだけあります。これでは非常に分かり難いのでもう少し詳しくご説明いたします。

「標準的な食事」とは栄養学的には700kcal(バイエル薬品にも確認済み)、尚且つ脂肪は30%以内ということ。700kcalの30%は210kcalであり、栄養学的に脂質1gが9kcalですので、210kcalを脂質で算出すると23.3g、よって700kcal未満で脂質が23.3g以下であれば食事の影響を受けないと解釈できます。具体的な例をいくつかあげておきますので参考にしてください。(2023年5月3日調べ)

メニューカロリー脂質食事の影響
すき家 牛丼並盛733Kcal25.0gあり
吉野家 牛丼並盛633Kcal23.6gあり
なか卯 親子丼並盛620Kcal12.1gなし
COCO'S 魚介のスープパスタ596Kcal15.4gなし
マクドナルド ビッグマック525Kcal28.3gあり
やよい軒 しまほっけ定食660Kcal21.3gなし
幸楽苑 中華そば(スープ含む)671Kcal19.6gなし
ほっかほっか亭 のり唐揚弁当788Kcal22.6gあり

レビトラの有効成分は服用後、十二指腸などの小腸で体内に吸収されます。食後だと食べ物に含まれている脂分が腸に膜を張ってしまうため成分の吸収を妨げてしまうのです。脂質が多ければ多いほど腸に膜が張りやすくなるため「脂肪の割合は30%以内」という条件が付くわけです。
【重要】制限内の食事であっても、空腹時に服用した方が体内への吸収が非常に良いため、薬の効果を引き出せることは確かです。

食後にレビトラ錠を服用する場合

空腹時に服用した方が効果があるとはいえ、成り行き上、どうしても食後になってしまう事もあるかと思います。そういった場合は、食事の内容をなるべく脂質の少ないものにして、食後2時間程度、時間を空けることで薬の効果は引き出せます。「今日はレビトラのお世話になるかもな」という時は食事の内容を意識するとよいでしょう。
また既に脂質の高い食事をしてしまった場合は、やはり消化までに時間を空けることも大事ですが、普段レビトラ10mg服用している人であれば2錠同時に服用して20mgに用量を増やすというのもよいでしょう。

バイエル薬品提供の資料

以下はバイエル薬品が作成した食事の影響に関する資料です。ここに「700kcal未満かつ脂質23.3g以下」と明記されています。

食事の影響に関する文献

食事の影響に関するバイエル薬品の資料には根拠となる文献として「Rajagopalan P et al.:J Clin Pharmacol 43(3):260-267(2003)(英文)」と明記されています。この文献の内容を翻訳し要約すると「【対象者は25人の健康な成人男性】"高脂肪朝食"の摂取後と空腹時服用とで比較するとCmax(最高血漿中濃度)は2割弱低下、Tmax(最高血漿中濃度到達時間)は空腹時は1時間後に対して食後は2時間後と食事により1時間の遅れを生じた。次に夕方に"典型的な中程度の脂肪食"摂取後と空腹時服用で比較すると影響は無かった。」と記されています。「標準的な食事」とは文献にある"典型的な中程度の脂肪食"のことを指しています。その時の薬物動態比較表はバイエルの資料にもあり以下の通りです。

投与
方法
AUC
(μg・h/L)
Cmax
(μg/L)
Tmax
(h)
t1/2
(h)
空腹時51.97(72)14.22(70)1.00(0.50~3.00)3.9(66)
食後59.12(56)13.04(66)1.00(0.50~4.00)3.8(39)

中央値(範囲)
幾何平均値(幾何標準偏差),n=6
Tmax:最高血漿中濃度到達時間
Cmax:最高血漿中濃度
AUClast:0時間から最終定量可能時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積
AUC:0時間から無限大時間までの血漿中濃度-時間曲線下面積
T1/2:消失半減期(血漿中濃度半減期)

2021年2月改訂(第1版)レビトラの添付文書【PDF】を参照

レビトラを服用後の最高血中濃度までの時間(Tmax)や終末相における半減期までの時間(T1/2)、単回経口投与後の投与量に対する変化。また、食後と空腹時にレビトラを服用した際の体内動態に及ぼす食事の影響など、詳しい内容を添付文書を参考にまとめました。

(1) 単回投与(薬剤の投与を1度きりで行う)

日本人健康成人男子18例に、バルデナフィル(レビトラ)10mg、20mg及び40mg*1 を空腹時単回経口投与した場合、血漿中バルデナフィル(未変化体)濃度は投与後0.75時間にピークに達し、以後約3.2~5.3時間で血漿中濃度は最高濃度時の半分となり(消失半減期)で速やかに消失した。バルデナフィル(未変化体)のAUC及びCmaxは、以下のグラフの通り用量比にほぼ応じて増加した。


投与量
(mg)
AUC
(μg・h/L)
Cmax
(μg/L)
Tmax *2
(h)
t1/2
(h)
10mg20.94(1.72)10.05(1.86)0.75(0.50~1.00)3.19(1.08)
20mg44.14(1.39)18.35(1.29)0.75(0.50~1.00)3.98(1.46)
40mg137.73(1.72)51.71(1.86)0.75(0.75~3.00)5.33(1.20)

AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積(体内への薬物総吸収量の指標)
Cmax:最高血漿中濃度
Tmax:最高血漿中濃度到達時間
T1/2:消失半減期(血漿中濃度半減期)

(2) 反復投与(外国人における成績)

健康成人男子43例に,バルデナフィルを1日1回14日間(40mg)*1、1日1回(20,40mg)又は隔日1回(40mg)*1 31日間反復経口投与した場合、血漿中バルデナフィル(未変化体)濃度推移は、いずれの投与量、投与方法及び投与期間においても初回投与後とほぼ同様であった。また、バルデナフィル(未変化体)の薬物動態学的パラメータにも大きな変動はみられず、反復投与による蓄積性は認められなかった。

*1 40mgは国内承認用量とは異なります。国内承認は20mgまで。
*2 中央値(範囲)
幾何平均値(幾何標準偏差),n=6

吸収:絶対的バイオアベイラビリティ*3 は14.5%
代謝部位及び代謝経路:肝臓及び小腸
排泄経路:糞中
健康成人男子に[14C]バルデナフィル33mg*4 を単回経口投与した場合、投与量の約93%が投与後168時間までの糞中に排泄された。
本剤は、主に肝代謝酵素チトクロームP450 3A4(CYP3A4)により代謝されるため、本酵素に対して阻害作用を有する薬剤と併用した場合はCmax及びAUCが増加し薬が効きすぎて思わぬ副作用が発現する可能性があるので注意が必要。


*3 バイオアベイラビリティとは、生物学的利用率のことで、摂取した薬剤の有効成分が体全体に吸収する割合のことを言います。つまり血管から直接注入する静脈注射の生物学的利用率は100%となります。
*4 33mgは国内承認用量と異なります。国内承認は20mgまで。

健康な非高齢男子(18~45歳)8例及び高齢男子(66~78歳)9例に、バルデナフィル40mg*5 を空腹時単回経口投与した場合、高齢男子では未変化体の AUC 及び Cmax が非高齢男子に比べて約1.3~1.5倍とやや高かった。

上記の理由で「高齢者は血漿中濃度が上昇する可能性があるため低用量(5mg)からの慎重投与が望ましい」と添付文書にも明記されているが5mgでは効果が期待できないので当院では高齢者でも10mgから投与している。尚、今まで70歳以上の高齢者、延べ1万人に対して10mgを処方しているが健康を害するような報告は1例もありません。

*5 40mgは国内承認用量と異なります。国内承認は20mgまで。

健康成人男子8例及び腎障害患者24例に、バルデナフィル20mgを空腹時単回経口投与した場合、中等度の腎障害患者(CLcr=30~50mL/min)及び重度の腎障害患者(CLcr≦30mL/min)のバルデナフィル(未変化体) AUC 及び Cmax は、健康成人男子に比べ約1.2~1.4倍とやや高い値を示したが CLcr と AUC あるいは Cmax との間に有意な相関は認められなかった。

以上の理由により血液透析が必要な腎障害のある患者は禁忌(投与不可)となっています。当院でも透析患者への処方はしておりません。

健康成人男子6例及び肝障害患者12例に、バルデナフィル10mgを空腹時単回経口投与した場合、中等度の肝障害患者(Child-Pugh class B)のバルデナフィル(未変化体) AUC 及び Cmax は健康成人男子と比べ、約2.3~2.6倍に増加した。

以上の理由から重度の肝障害患者は禁忌(投与不可)、中等度の肝障害のある患者へは低用量(5mg)からの慎重投与と添付文書にも明記されています。ちなみに肝障害の重症度の基準は以下の「Child-Pugh(チャイルド・ピュー)分類」を使用するのが一般的です。合計点数が「10点以上でGrad C:重度」「7~9点でGrad B:中等度」「5~6点でGrad A:軽度」となります。

1点2点3点
脳症なし軽度
(Ⅰ・Ⅱ)
昏睡
(Ⅲ以上)
腹水なし軽度中程度
以上
血清総ビリルビン値(mg/dL)2.0未満2.0~3.03.0超
プロトロンビン活性値(%)70超40~7040未満
血清アルブミン値(g/dL)3.5超2.8~3.52.8未満

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