糖尿病3大合併症とED ~糖尿病性腎症~

浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修

血液中のブドウ糖濃度が高くなることで網膜に異常が表れ、その後進行すると硝子体までもが異常をきたし、最悪の場合は失明に至ります。糖尿病性網膜症で失明するのは2005年当時で毎年3000人程度といわれており、2017年の山形大学医学部の山下英俊教授のお話によると国内の糖尿病患者数は約950万人。そのうちのおよそ3分の1、約300万人が糖尿病網膜症であるといわれており、そのなかでも約100万人に、実際に視力低下や失明が起きているとのこと。成人の失明原因も第一位が緑内障と並んで第二位が糖尿病網膜症なのです。

2017年の日本国内でも視覚障害の原因疾患の調査研究では、緑内障が視覚障害原疾患全体の28.6%、網膜色素変性症14.0%に続いて、糖尿病網膜症は3番目で12.8%を占めています。

白神史雄 : 厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患政策研究事業 網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究 平成28年度 総括・分担研究報告書 : 32, 2017より作図

進行度合いにより単純網膜症、増殖前網膜症、増殖網膜症の3つに分けることができます。

単純網膜症

血液中のブドウ糖濃度が高い状態が続くと網膜の毛細血管内に血栓ができ、血液の流れが悪くなり血管の一部がコブ状に膨れます。これを毛細血管瘤と呼びます。やがて毛細血管瘤から血液中のタンパク質などが漏れ出すようになり、漏れ出したタンパク質は網膜の深層部に沈着して、硬性白斑と呼ばれる痛みを伴わない浮腫になります。

増殖前網膜症

増殖前網膜症まで進行すると、軟性白斑が見られます。第一段階の単純網膜症の硬性白斑は境界がくっきりとした浮腫なのに対し、軟性白斑は境界が不鮮明な綿毛状の白斑が特徴的です。また、軟性白斑の段階になると、浮腫は深層部から硝子体に近い網膜の表面まで出てきます。この時期から徐々に自覚症状を訴える人が増えてきます。

増殖網膜症

最終段階では血管の閉塞、出血、沈着物が増え、網膜の血流が非常に悪い状態になってきます。このように血流が悪くなると、新しい血管が増殖される現象が起こります。この段階を増殖期網膜症と呼ばれます。しかし、新たに作り出された血管は緊急に作られたものなので非常に脆く、すぐに破れて出血してしまいます。すると再出血したところにまた新しい血管ができて、その血管が破れまた出血します。このように出血を繰り返すことで、網膜は血だらけになってしまうのです。さらに、この段階の病変は硝子体まで到達しているため、硝子体出血も起こします。こうなると視力は急激に低下します。

網膜や硝子体に大量に出血が起こると、出血した部分は線維組織に置き換えられます。傷口にカサブタができるのと同じ要領です。この線維組織が硝子体の出血部分にできるとひきつれが起こり、その際網膜も一緒に引っ張られることになります。この引っ張る力に耐え切れなくなると、網膜は引き剥がされてしまいます。この状態を網膜剥離といい、失明の危険性が非常に高まります。

単純網膜症の段階では血糖コントロールで進行を防ぐことができますが、増殖前網膜症まで進んでしまうと、血糖コントロールが良好でも病変は進行する可能性があります。進行してしまった糖尿病網膜症の治療には、光凝固療法、硝子体手術や薬物療法などがあります。しかし、いずれの治療法でも完治することはできないので、早い段階での対処がとても重要になります。糖尿病の方は視力に関する自覚症状がない場合も定期的な眼底検査が必須です。

糖尿病性網膜症の方でも、バイアグラなどのED治療薬の服用は禁忌ではありません。EDの症状がある方は、主治医や当院医師にご相談ください。

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