バイアグラとの併用注意薬についての詳細
ED治療薬3剤の違い
3剤の違い シルデナフィル バルデナフィル タダラフィル
AGAとは プロペシア ザガーロ ミノタブの危険性 AGA治療薬2剤の違い
2剤の違い フィナステリド デュタステリド 電話によるオンライン診療
オンライン診療
目次※知りたい情報をクリック
浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修
バイアグラの有効成分であるシルデナフィルは肝臓で代謝されます。もう少し詳しく説明すると代謝には肝臓にあるCYP3A4という酵素(CYP450等の分子種の一種)が大きく関与しています。
CYP3A4を阻害する他の薬剤と併用することで薬の作用が強く出過ぎたり、代謝を遅らせて半減期を引き延ばす可能性もあるため思いもよらぬ副作用が発現する可能性があるので注意が必要です。反対にCYP3A4を誘導する薬剤と併用することで代謝が早まり満足な効果が得られなくなることがあるので注意が必要です。
また、シルデナフィルは血管拡張作用があるため血圧が若干下がります。そのため一部の降圧剤と併用すると降圧作用が増強するのでこちらも注意が必要です。
詳細はバイアグラのインタビューフォームを参考に以下にまとめていますのでご覧ください。
薬剤名等 | 臨床症状・借置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
チトクロームP450 3A4阻害薬(リトナビル、サキナビル、ダルナビル、エリスロマイシン、シメチジン、ケトコナゾール、イトラコナゾール、エンシトレルビルフマル酸、ニルマトレルビル・リトナビル等) | リトナビル、サキナビル、エリスロマイシン、シメチジンとの併用により、本剤の血漿中濃度が上昇し、最高血漿中濃度(Cmax)がそれぞれ3.9倍、2.4倍、2.6倍、1.5倍に増加し、血漿中濃度-時間曲線下面積(AUC)がそれぞれ10.5倍、3.1倍、2.8倍、1.6倍に増加した。 | 代謝酵素阻害薬によるクリアランスの減少 *1 |
*1 クリアランスの減少とは、肝臓での代謝する能力が低下することを意味しています。代謝機能低下により血中濃度が上昇したり半減期が延長したりするということです。
AUC:血漿中濃度-時間曲線下面積(体内への薬物総吸収量の指標)
Cmax:最高血漿中濃度
Tmax:最高血漿中濃度到達時間
T1/2:消失半減期(血漿中濃度半減期)
シメチジンとの併用試験
外国人健康成人男性22例が対象
◆試験1日目と5日目にシルデナフィル50mg(バイアグラ50mg)を1錠経口投与。
◆試験3~6日目にシメチジン800mg又はプラセボ(偽薬)を1日1回空腹時に連日経口投与。
その結果、シルデナフィルのCmax及びAUC0~tは1日目に対する5日目の変化率をプラセボ併用群とエリスロマイシン併用群で比較するとそれぞれCmaxは1.54倍及びAUC0~tは1.56倍と増加が示された。これは、シルデナフィルがCYP3A4で代謝されるためCYP3A4の阻害薬であるシメチジンの併用によりシルデナフィルの代謝及びクリアランスが遅れたためです。以上より併用には注意すべきと考えられる。
※シメチジンは胃酸を抑えるH2ブロッカーといわれている胃薬です。代表的なものにタガメットがあります。
エリスロマイシンとの併用試験
外国人健康成人男性24例が対象
◆試験1日目と6日目にシルデナフィル100mg(バイアグラ100mg)を食後2時間後に1錠経口投与。
◆試験2~6日目までエリスロマイシン500mg又はプラセボ(偽薬)を1日2回連日経口投与。
その結果、シルデナフィルのCmax及びAUC0~∞は1日目に対する6日目の変化率をプラセボ併用群とエリスロマイシン併用群で比較すると、それぞれ2.6倍及び2.8倍に増加した。Tmax、T1/2には差がみられなかった。エリスロマイシン併用によってCYP3A4が阻害され、代謝機能が低下しシルデナフィルの代謝が遅れたためと考えられます。エリスロマイシンの投与により「副作用の増加はみられなかった」とインタビューフォームには記されてはいるものの最高血中濃度が2.6倍という数値は思わぬ副作用発現のリスクがあるので注意が必要です。
※エリスロマイシンはマクロライド系の抗生物質です。マクロライド系は他にはロキシスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ジョサマイシン、スピラマイシン等もあります。これらもCYP3A4の作用を阻害するので注意が必要です。
リトナビルとの併用試験
外国人健康成人男性28例が対象
におけるリトナビル及びシルデナフィルの併用時の薬物動態を検討するオープン(非盲検)無作為割付けプラセボ対照クロスオーバー試験(比較試験)を行った(シルデナフィルの投与7日目及び8日目は、二重盲検、無作為化、プラセボ対照、2期クロスオーバーにて実施)。
【第1群の被験者】1日目にシルデナフィル100mg(バイアグラ100mg)を1錠投与。2日目はリトナビル300mg、1日2回の投与を開始し、3日目に400mg1日2回、4~8日目には500mg1日2回を投与。7日目の朝、二重盲検比較試験を開始し、無作為にシルデナフィル100mg又はシルデナフィルのプラセボを単回投与したのち、8日目の朝には、シルデナフィル又はプラセボのうち前日投与しなかった方を投与。
【第2群の被験者】第1群と同じ方法で投与したが、リトナビルの代わりにリトナビルのプラセボを投与した。
リトナビル(500mg、1日2回)によって、シルデナフィルのCmaxが3.9倍(290%)、AUCが10.5倍(950%)へと有意に増加した。さらに、Tmaxが3.1時間有意に延長し、除去速度定数(Kel)が0.06/hr減少した結果、半減期は約2時間延長した。一方、シルデナフィル100mg単回投与はリトナビルの薬物動態に影響を及ぼさなかった。リトナビルとの併用によってCYP3A4が阻害され、シルデナフィルの代謝を大きく遅らせたことが考えられます。
大幅に血漿中濃度を増加させ、半減期を2時間も遅らせるというのは効果が出過ぎて想定外の副作用発現のリスクが高いのでED治療薬のレビトラでは併用禁忌となっているくらいですから併用には特に注意する必要があります。
※リトナビルはHIVの治療薬です。代表的な薬としてノービアやカレトラがあります。
非盲検試験とは、オープン試験ともいい、被験者、医師、スタッフに「被験者がどの治療群に割り当てられたか」をオープンにして行われる試験。
二重盲検比較試験とは、ダブルブラインドクロスオーバー試験ともいい、被験者、医師、スタッフが「被験者がどの治療群に割り当てられたか」を全く知らない状態で行われる試験。
サキナビルとの併用試験
外国人健康成人男性28例(外国人、18~45歳)が対象
オープン(非盲検)無作為割付けプラセボ対照クロスオーバー試験(比較試験)により、サキナビル及びシルデナフィルの併用時の薬物動態を検討した。
【第1群の被験者】1日目にシルデナフィル100mg(バイアグラ100mg)を単回投与した。2日目の朝、サキナビル(1,200mg、1日3回)の投与を開始し、7日間継続。7日目の朝、二重盲検比較試験を開始し、無作為にシルデナフィル100mg又はシルデナフィルのプラセボを単回投与したのち、8日目の朝には、シルデナフィル又はプラセボのうち前日投与しなかった方を投与。
【第2群の被験者】第1群と同じ方法で投与したが、サキナビルの代わりにサキナビルのプラセボを投与。
その結果、サキナビル(1,200mg、1日3回)によって、シルデナフィルのCmaxが2.4倍(140%)、AUCが3.1倍(210%)へと有意に増加した。さらに、Tmaxが2.6時間有意に延長し、除去速度定数(Kel)が0.046/h減少した結果、半減期は約1時間延長した。一方、シルデナフィル100mg単回投与はサキナビルの薬物動態に影響を及ぼさなかった。サキナビルとの併用によってCYP3A4が阻害され、シルデナフィルの代謝を大きく遅らせたことが考えられます。
併用により血漿中濃度が2.6倍、半減期も1時間延長させることで薬が効きすぎて副作用の発現も増強させる可能性があるためED治療薬のレビトラでは併用禁忌となっているくらいですからサキナビルとバイアグラの併用は注意が必要です。
※サキナビルはHIVの治療薬です。代表的な薬としてインビラーゼやフォートベイスカプセルがあります。
ダルナビルとの併用について
ダルナビルとリトナビルの併用例に本剤を併用した際、本剤のCmax及びAUCの増加が認められたとの報告があります。
※ダルナビルはHIV治療薬で代表的な薬としてプリジスタやプリジスタナイーブがあります。
新型コロナウイルス感染症治療薬との併用について
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染症の治療薬である「ニルマトレルビル・リトナビル」や「エンシトレルビルフマル酸」はCYP3Aを強く阻害ため本剤と併用すると薬剤の血中濃度が大いに上昇するおそれがある。よって本剤の副作用が発現しやすくなるおそれがあるため、充分な観察を行いながら慎重に投与し、必要に応じて減量や休薬等の適切な措置を講ずること。
※ニルマトレルビル・リトナビルはファイザーの「パキロビット」、エンシトレルビルフマル酸は塩野義のゾコーバです。
薬剤名等 | 臨床症状・借置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
チトクロームP450 3A4誘導薬(ボセンタン、リファンピシン等) | 本剤の血漿中濃度が低下するおそれがある。 | 代謝酵素誘導によるクリアランスの増加 *2 |
バイアグラの主成分であるシルデナフィルは肝臓のチトクロームP450・3A4(CYP3A4 CYP450等の分子種の一種)という酵素によって代謝されることから、この酵素を誘導するボセンタン、リファンピシン等との併用はシルデナフィルの血漿中濃度が低下する可能性がある。
つまり、本来の効果が得られなくなる可能性があるということです。
薬剤名等 | 臨床症状・借置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
降圧剤 | アムロジピン等の降圧剤との併用で降圧作用を増強したとの報告があります。 | バイアグラは血管拡張作用による降圧作用があるため、併用による降圧作用の相乗効果で血圧が下がり過ぎることがあります。 |
アムロジピンとの併用試験
【アムロジピン5又は10mgを常時服用している本態性高血圧症の外国人患者16例を対象】
アムロジピンの薬物動態及び血行動態に及ぼすシルデナフィルの影響を二重盲検比較試験により検討。
アムロジピンを空腹時に投与し、その2時間後にシルデナフィル100mg(バイアグラ100mg)又はプラセボを1錠併用投与。
その結果、シルデナフィル併用群ではプラセボ併用群に比べ心拍数の基準値からの有意な上昇と仰臥位(仰向けで寝ている状態)及び立位(立った状態)における収縮期血圧(上の血圧)及び拡張期血圧(下の血圧)の基準値からの有意な低下が認められた。したがって、アムロジピン等の降圧剤を投与している患者にはバイアグラと併用することで血圧が下がり「めまいや立ち眩み等」の副作用の発現リスクが高まる可能性を伝えるなどして注意する必要があります。
※アムロジピンは高血圧患者に処方されるお薬で血圧を下げる効果があります。代表的なお薬としてノルバスクやアムロジンがあります。
薬剤名等 | 臨床症状・借置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
α遮断剤 | ドキサゾシン等のα遮断剤との併用でめまい等の自覚症状を伴う血圧低下を来したとの報告がある。降圧作用が増強することがあるので、低用量(25mg)から投与を開始するなど慎重に投与すること。 | 本剤は血管拡張作用による降圧作用を有するため、併用による降圧作用を増強することがある。 |
トキサゾシンとの併用試験
【ドキサゾシンにて治療を行っている前立腺肥大症(Benign Prostatic Hyperplasia:BPH)に伴う排尿障害患者17例(55~75歳)の外国人を対象】
ドキサゾシン(4mg又は8mg)の薬物動態及び血行動態に及ぼすシルデナフィルの影響を二重盲検比較試験により検討。
2週間連日1日1回ドキサゾシンを経口投与した後に、シルデナフィル25mg(バイアグラ25mg)又はプラセボを1錠併用投与。
その結果、シルデナフィル25mg併用群ではプラセボ併用群に比べ心拍数の基準値からの有意な上昇「仰臥位(仰向けで寝ている状態)3.7拍/分:立位(立った状態)6.5拍/分」の低下と、仰臥位血圧において平均で収縮期(上の血圧)7.4mmHg、拡張期(下の血圧)6.8mmHgの追加低下が認められています。
※ドキサゾシンは高血圧患者に処方されるお薬でαブロッカーともいわれています。代表的なお薬にカルデナリンがあります。(注:ドキサゾシンは米国ではBPHに伴う排尿障害の適応されているが日本国内では高血圧の適用のみです。)
薬剤名等 | 臨床症状・借置方法 | 機序・危険因子 |
---|---|---|
カルペリチド | 併用により降圧作用が増強するおそれがある。 | 本剤は血管拡張作用による降圧作用を有するため、併用による降圧作用を増強することがある。 |
カルペリチドとの併用試験
急性心不全治療剤であるカルペリチドは、α型ヒトナトリウム利尿ペプチドの受容体に結合し、膜結合性グアニル酸シクラーゼを活性化させることにより細胞内cGMPを増加させ、それに基づき血管拡張作用や利尿作用等を示す薬です。
一方、バイアグラは陰茎海綿体のcGMP分解を司るPDE5を阻害することによりcGMP分解を抑制し、海綿体の平滑筋弛緩、血管拡張により勃起を促す。現在までのところ、バイアグラとカルペリチドとの相互作用に関する臨床ならびに基礎実験データはありません。
しかし、両剤ともcGMPを増加させることで血管拡張作用があるため併用による降圧作用が増強されるおそれがあるためカルペリチドを服用している人には「相乗効果により血圧が下がる」「血圧が下がり貧血気味になりやすい」等の注意点を伝え、慎重に投与する必要があります。