本態性高血圧(一次性高血圧)- 高血圧の種類と特徴 -

浜松町第一クリニック 竹越昭彦院長 監修

高血圧は発症する原因から「本態性高血圧」と「二次性高血圧」の二つに分類されます。前者は便宜上「一次性高血圧」と呼ぶ場合もあるようです。二次性高血圧は原因が明らかな高血圧であり、反対に原因が不明な高血圧群を本態性高血圧と呼びます。

高血圧症のおよそ90%から95%は本態性高血圧です。成人に多いとされており、国内の患者数は約783万人です。高血圧は血圧が正常範囲を超えている状態が継続する症状をいいますが、血圧が上昇する原因はさまざまです。本態性高血圧はその原因が不明なものの総称です。一方で、血圧上昇の要因が明らかなものは「二次性高血圧」に分類され、原因を追究して取り除くことができれば血圧も正常化することができる根治可能高血圧(curable hypertension)です。

本態性高血圧に関しては、これまでに多くの研究が行われていますが、いまだにその発生のプロセスは解明されていません。本態性高血圧の原因が不明であるというのは、単一の病因では説明できないという意味であり、様々な要素が絡んで発生しているというのが現在主流となっている考え方です。通常は30歳台、40歳台から徐々に発症し高齢者ではおよそ70%が罹患するといわれるこの疾病は、高食塩や肥満、運動不足、ストレスなどからなる環境要因が主因として疑われており、さらに多くの要因の相互作用の結果と考えられています。

高血圧かどうかの診断は、以下の表のように、最高血圧と最低血圧の値で診断されます。


本態性高血圧には特徴的な症状はありません。高血圧発症の早い段階では頭痛や頭重感、肩こり、倦怠感といった不定愁訴のような症状を訴えることがあります。一般的には高血圧を引き起こす原因疾患の特徴的発作の有無や家族歴といった病歴、典型的な身体症状の有無の確認から、血液検査や画像検査で確定診断を行った結果、二次性高血圧が否定された場合に本態性高血圧と診断されます。

二次性高血圧の原因となり得るものは次のようなものがあります。

  1. 腎性高血圧(腎炎、多発性のう胞腎、慢性腎盂腎炎など)
  2. 血管性(腎血管性高血圧、大動脈炎症候群、大動脈縮窄症など)
  3. 内分泌性(原発性アルドステロン症、Cushing 症候群など)
  4. 神経症(脳腫瘍、脳炎、脳幹部血管圧迫など)

さらに睡眠時無呼吸症候群や薬剤誘発性高血圧、治療抵抗性高血圧なども二次性高血圧に含まれます。若年性や急性発症も二次性高血圧の特徴です。

「血圧」は体内の血管内に「血液を送るための圧力」と「血管内の血液の流れやすさ」で決まります。圧力を生み出す心臓のポンプ作用は「心拍出量」と呼ばれ、動脈の血液の流れやすさは「末梢血管抵抗」です。すなわち「血圧=心拍出量×末梢血管抵抗」とあらわすことができ、「血圧が高い状態」とは「心拍出量の増加」や「末梢血管抵抗の増加」、あるいはその両方が同時に起こることをいいます。

本態性高血圧の方の多くは、末梢血管抵抗の増加傾向が多く見られます。これは、動脈硬化によって血管が細い状態になっていたり、血液がドロドロな状態となり流れにくくなってしまっていることなどがあげられます。

高血圧には、食塩感受性と非食塩感受性の高血圧があります。簡単に言ってしまうと、減塩によって、血圧低下効果が大きいものを「食塩感受性」、減塩しても血圧の低下作用があまりないものを「非食塩感受性」と呼びます。食塩を過剰に摂りすぎると、高血圧の原因となるとされるのは、チンパンジーに1日5から15gの食塩を与え続ける研究により食塩量に依存した血圧上昇が認められたことからです。人においても食塩と高血圧は密接に関わっていることは、よく知られていることではないでしょうか。

食塩にはナトリウムが含まれますが、ナトリウムは人間の身体を維持するうえで重要な栄養素であり、常に一定量が体内を循環するように血液中の含有量と血圧が調整されています。この調整を行っている器官が腎臓です。

腎臓は“ろ過器”の役割を持ち血液中から水と老廃物を取り除きますが、過剰に水分やナトリウムなどを排泄しないように、体内に再吸収する機能が備わっています。腎臓が血圧の低下を感知すると、体内に水分やナトリウムが不足していると判断し、排泄しようとしていた水分やナトリウムを体内に再吸収するよう働くのですが、この機能が過剰に働いてしまうことが、本態性高血圧の原因のひとつに挙げられています。
つまり、体内へ過剰に摂取された塩分(ナトリウム)を適切に排泄できない状態となり、ナトリウムと水分が体内に過剰となり、高血圧を引き起こします。このような病態では、食塩を過剰摂取するとそれに応じて血圧が上昇するため、「食塩感受性高血圧」と呼ばれています。

食塩感受性高血圧とは

ここからは、少し難しい話になりますが、食塩感受性高血圧についてご説明します。

体内では、血圧の低下を感知すると、腎臓の傍糸球体細胞から「レニン」という物質が分泌されます。この「レニン」は血管を収縮させる「アンジオテンシン系」を活性化させて、血圧を上昇させると共に、アルドステロンやバソプレシンという物質の分泌を促し、尿などで体の外へ排泄されようとしていた水分やナトリウムを、体内に戻す(再吸収)ように作用します。

身体が正常な状態では、血圧が正常に戻ると、水分とナトリウムを再吸収させるように働いていた「レニン」の分泌が低下します。その結果尿などで体内の過剰なナトリウムや水が排泄されるため、正常な水分量とナトリウム量を維持し、適正な血圧を維持することが出来ます。

ところが何らかの要因によってこの調節機能に狂いが生じ、レニンやアンジオテンシン系の働きが低下しないと、食事から摂った食塩のナトリウムや水分がうまく体の外へ排泄出来なくなります。結果として体内にナトリウムと水分が過剰な状態となり、血圧が高い状態が持続してしまいます。この疾病を「食塩感受性高血圧」とよび、本態性高血圧の原因の1つとして疑われています。

他にも、食塩感受性の高血圧のメカニズムは、腎臓での交感神経系の異常によるナトリウムの排泄低下、遺伝子異常によってアルドステロンの過剰産生などが発表されています。

本態性高血圧の治療は二次性高血圧とはまったく異なり、生活習慣の改善が中心となります。減塩や減量、適度な運動がそれにあたります。ただし本態性高血圧の環境要因には明確な定義や診断基準が存在しないのが実情です。代表例でもある「食塩感受性高血圧」も特定の検査はなく、この症状にあたるかは断定できません。

食塩感受性でない場合では、減塩によって血圧が低下しませんが、減塩することは、「胃がん」のリスクを減らしたり、「左心室肥大」などの心臓病、EDの原因でもある「動脈硬化」のリスクを減らしますので、高血圧を自覚している方は、減塩に努めましょう。

高血圧は、心筋梗塞や脳卒中などの命に関わる病気を誘発する可能性がありますので、減塩、適度な運動、減量、ストレスの軽減などを行っても、血圧が高い状態が続く場合では、「利尿薬」や「Ca 拮抗薬」、「アンジオテンシンII受容体拮抗薬」といった降圧剤を用いた降圧薬療法を受ける必要があります。

本態性高血圧は、EDを併発しやすい生活習慣病の1つです。どちらも動脈硬化による血流の低下が大きな原因のひとつですので、当然のことかもしれません。

また降圧剤の副作用によってEDを引き起こすことも知られております。

当院でも、本態性高血圧の患者様が数多くいらしており、バイアグラなどのED治療薬がよく効きますので、お悩みの方は試してみるといいでしょう。

なお一般的な降圧剤とED治療薬の併用に問題はありません。

『安静時血圧が 170 / 100 mmHg 以上の方』
血圧は、ちょっとした運動や緊張でも変化しますが、安静にしている時の血圧が、収縮期血圧 170 mmHg、拡張期血圧 100 mmHg 以上とコントロールされていない場合には、ED治療薬の処方が出来ません。(禁忌)
これは、血圧が高い状態で性行為を行うことが危険なためです。
このような場合では、まず降圧剤などで、高血圧の状態をコントロールする必要があります。一般内科やかかりつけ医を受診し、高血圧の治療をまずは行ってください。降圧剤などの治療で、上記以下の血圧にコントロールされていれば、ED治療薬の処方が出来ます。

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